フローレンス

社会的問題を事業によって解決する・・・日本ではまだ生まれたばかりの「ソーシャル・ベンチャー」という概念を胸に、そのパイオニアたらんと活動するNPO法人がある。2003年、若きIT世代の駒崎氏が立ち上げた「特定非営利活動法人フローレンス」である。東京都江東区・中央区をベースに地域密着型の病児保育に着目し、独自の事業展開を行っているという。

「仕事と育児の両立における悩みについて"病児保育"と答える人が72.2%と圧倒的な数を占めるにも関わらず、病児保育を扱う保育所は、全国に500箇所(保育所全体のわずか2%)と非常に少ないのが現状です。

フローレンスではこの病児保育問題を独自のモデルで解決し、ワーキングペアレンツの新しいライフラインとして確立していきたいと考えています」

活動の中核を担う「こどもレスキューネット事業」のレスキューチームマネージャー低引(そこびき)さんは、活動の背景にある要因をそう指摘する。

「こどもレスキューネット」とは、急な発熱などで保育園では預かってもらえない病児を、地域の子育てベテランママと地元の小児科医がタッグを組み地域ぐるみでサポートするシステム。利用会員がフローレンスの本部に連絡すると、すぐさまこどもレスキュー隊員と呼ばれるスタッフに電話連絡がいき、隊員みずからが会員の自宅へかけつける。その後医師の診察を受け、隊員の自宅(もしくは利用会員宅)で病児の面倒をみるという流れになっている。

現在、こどもレスキュー隊員として活動する子育てベテランママは、約20名。50代から60代の女性が大半を占めるという。

「こどもレスキュー隊員は子育て経験が豊富な方々。私たち本部は信頼感を持って保育をおまかせしています。その反面、課題となっていたのが、病児をマンツーマンで預かることによる隊員自体の孤独です。病児はいつ容態が急変するかわかりません。通常の保育より気を遣うだけでなく、保育現場における的確な判断を求められる隊員には多大な重責がかかってしまいます」

その問題を解消しようと試行錯誤を重ねた結果、2006年3月、画像や音声のやりとりが可能なソフトウェア「MSNメッセンジャー」を導入するにいたったという。

保育士などの資格を持つ本部スタッフが常駐するフローレンス事務局と病児保育の現場をウェブカメラでつなぐことにより、マンツーマン保育の孤独・病児保育の重責を少しでも軽減できないかと試みた。

「実際にウェブカメラを運用してみて実感したのは、カメラを通じて子どもの様子を共有することがいかに大切かということでした。ライブ感覚で病状について話し合ったり、その日のお預かりについての方針などを立てやすくなったことで、隊員の孤独や不安を払拭する手助けができたようです。

万が一、病状が急変した際に、本部スタッフの顔を見ながら具体的な指示を仰げるという点も隊員の負担感を軽減することに役立ちましたね」

そうはいうものの、導入までの道のりは決して平坦ではなかった。ソフトウェアを使用する隊員の年齢層が若干高めなことから、まずPCを支給し、電源の入れ方など初歩的な使い方からレクチャーする必要性が生じたからだ。

「IT活用に対する受け皿から準備する必要があった上、カメラの設置に関しては孤独感、負担感が減るというメリットなど誠意をもって伝えました。

そして当初予想された「本部に監視されている」という反対意見よりも「本部とよりコミュニケーションとることができ、安心につながる」という前向きな意見が寄せられ、隊員はもちろんのこと利用会員や提携医師のみなさんからもご賛同をいただいています。現在のネットシステムが軌道にのれば、利用会員宅、提携医師の病院との連携も視野にいれ、さらに緊密なネットワークを構築していけるのではないかと考えています」

まだシステムになじんでいない隊員には、ウェブカメラに慣れてもらうため業務以外で使用することも奨励している。

「他の隊員と世間話をするもよし。システムの使用頻度を高め、ICT活用が感覚的になじんでくるよう積極的に利用してもらえれば嬉しいですね」

フローレンスでは、このシステム構築の根底に地域コミュニティ交流の活性化も掲げているという。ICTを利用した広範囲のネットワーク構築に、さらなる期待が高まる。

 

【紹介】

団体名 特定非営利活動法人フローレンス
団体事務所 〒104-0033 東京都中央区新川2-5-1PSAビル305
TEL : 03 (3206) 2604
FAX : 03 (3206) 3049
Email : jimukyoku@florence.or.jp
URL : http://www.florence.or.jp/
代表者 代表理事 駒崎弘樹
活動開始年月 2003年4月
主な活動分野 男女共同参画

団体の使命、目的

仕事と育児の両立で悩むことは「病児保育」と答える人が72.2%と圧倒的な1位であるにも関わらず、現状として、病児保育を扱う保育所は、全国に500箇所(保育所全体のわずか2%)と非常に少ない。フローレンスは、この病児保育問題を独自のモデルで解決し、ワーキングペアレンツの新しいライフラインとして確立を目指す。

団体の主な活動

  1. こどもレスキューネット事業 : 今日は大事な会議。でもこどもが熱を出した!保育園は預かってくれない!そんなとき、地域の子育てベテランママと地元の小児科医がタッグを組み、地域ぐるみでお預かりする【地域密着型病児保育】で共働き家庭をサポート。
  2. ワークライフバランスコンサルティング事業 : 次世代法(2003年7月施行次世代育成支援対策推進法)に代表されるように、働き方そのものの見直しが迫られている。フローレンスでは、病児保育問題の背景にある就労環境の改善のため、法人向けのコンサルティング業務を実施。
  3. ソーシャルプロモーション事業 : 「病児保育」という言葉を「待機児童」と同じくらいメジャーな言葉に!を合言葉に、コンセプト発信をしていく。言葉がメジャーになれば、社会問題としての認識・理解が深まり、大きな変化へのムーブメントが起きる。フローレンスは、認知拡大に留まらず、病児保育を両立支援のためのポジティブなメッセージとして発信し、仕事と育児が当たり前の社会へ、誰もが「次の一歩」に挑戦できる社会へ、一歩ずつ歩みを進めていく。

【 IT データ】

かかる時間

  • 約2ヶ月

目安となる費用

  • 1万円
  • 【費用を抑えるコツ】
    画質の優れているカメラは鮮明ではあるものの、通信のスピードが遅くなるという問題を抱えていたため、求める画質を若干落として購入。これが結果的に費用を抑えることにもつながる。

必要なITスキル

  1. ウェブカメラのセッティング
    デバイスのインストールや、接続したときの不具合(マイクが正常に機能しないなど)を調整が可能であること。
  2. メッセンジャーをインストール
    MSNメッセンジャー(OSのバージョンが異なる場合はMSNメッセンジャーを推奨)のインストールが可能であること。
  3. メッセンジャーの操作
    ウェブカメラを接続し、メッセンジャーを立ち上げが可能であること。

必要なITインフラ

  • PC : CPU800MHz、メモリ256Mb、通信1Mbpm以上が望まれる
  • ウェブカメラ : 30万画素程度、内臓マイク付き
  • マイク : ウェブカメラの内臓マイクでは音が拾いづらい場合にはマイクをセッティングする
  • スピーカー : 音声を正確に聞き取るために、PC 内臓で不十分な場合には外付けスピーカーをセッティングする

下準備

  • 利用者のゴール設定を合わせる。カメラの設置に関して「監視されている」というネガティブな印象も与えかねないので、その不安感を払拭するための合意形成が必要。

工程

  1. PCの仕様について、事前ヒアリング
  2. PCの仕様に合わせて、ウェブカメラを発注。
  3. ウェブカメラの設置とメッセンジャーのインストールを行う。
  4. 利用者は定期的にビデオチャットをしてもらい慣れてもらう。

ワンポイントアドバイス

  1. スムーズな通信を行うために、ウェブカメラのグレードは低めのもの(30万画素程度)を使用。100万画素のレベルのカメラを使用すると、画像はきれいだが、通信環境によっては速度が著しく落ちる。
  2. ウェブカメラに慣れるため、業務以外で使用することを奨励
  3. ウェブカメラのセッティングやメッセンジャーのインストールなど、高度ではないがIT初心者にはやや困難。スタッフ間のトレーニングを実施するとよい。

投稿日 2007/1/4 (木) 投稿者: マイクロソフト
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